記事

書籍『店頭コミュニケーショングラフィックス』

店頭販促・POPの良い事例集がないかなと思って探しているうちに、少し古い(2008年)ですが、参考になるデザイン集があったのでご紹介します。なお、装幀はまるで洋書の翻訳版のようですが、掲載事例は日本市場のものです。そこも助かります。
店頭販促・POPのデザイン事例集ってなかなか質量ともに充実したが少ないと思います。いわゆる手書きPOPやDMのハウツー本は結構あるのですが、販促・POPに特化したデザイン事例集はあまり見かけません。またショップツール系の事例集も数多くあり、サイン、ショッパー、ショップカード、ノベルティなど、デザイナーがトータルブランディングを手掛けた店舗・商品ブランディングのデザイン集は充実しています。しかし、なぜか販促・POP類のデザイン事例集は少ない。というのも、POP類は制作部数が大量で、一つのアイテムあたりの予算がそれこそ数銭単位で厳しいですし、小売り店の店頭棚などで掲出して貰うために独特の成約があって、なかなかデザイン集としては集約しにくいものなんだと思います。あと、基本的に消耗品あるいは備品なのでクリエイティブ性が認識されづらいメディアです。

とはいえ、POPは、まさに「いまお店の中で目の前にいる人」に明確にメッセージして、1秒に満たないとも言われる短い時間でその気にさせなければいけないかなり難易度の高い制作物です。その商品を手に取ってもらい、最低限でも認知と想起を達成させなければいけないし、本来の目的はレジまでその商品を持っていって貰うこと、あるいはその場でいますぐに会員になって貰う、もしくはアプリなどをダウンロードして貰うことなどを期待されている責任の重いクリエイティブです。広告というより営業のクリエイティブですね。ですからそこにはクリエイターの知恵と工夫、そしてなにより経験が必要になります。この経験というのが得難いもので、企画性のあるアイデアを思いついても、資材の調達、あるいは配送の仕組み、販促セットの封入から取引先の現場スタッフの組み立ての簡便さまで考えなければいけないので、いろいろなメディアの中でもとりわけ経験が要求される制作物になります。そういう意味では、まさにデザイン事例集が必要とされる分野なのですが、販促・POPという単一ジャンルでは上述の通り、これ!というものがありません。

この本は、店頭コミュニケーショングラフィックの名の通り、販促やPOPに特化したモノではなく、店頭に置かれる立体物から印刷物までグラフィックデザインの優れたものを集めている事例集です。
しかし類書に比べると、POPや紙什器、箱物からリーフレットまで幅広く掲載されています。あるコンセプトを核にして店頭でユーザーと接触するタイミングで購買を訴求するメディアが多数載っています。印象としては、ショップツールと販促・POPの中間くらい、パッケージや商品ブランディングのデザイン、ノベルティから、紙什器やぶら下がりPOPまで掲載されているので、あるテーマについて店頭で様々な角度からユーザーにコミュニケーションしなければいけない案件を企画する時などに役立つと思います。

Amazon:店頭コミュニケーショングラフィックス

出典・参照
ハードカバー: 211ページ
出版社: ピエブックス (2008/02)
ISBN-10: 4894446456
ISBN-13: 978-4894446458
発売日: 2008/02
記事更新日
2014年07月30日
カテゴリー
コピー
デザイン
紙・加工