書籍『キャッチコピー・タイトルのレイアウトくふう別グラフィックス』
良く思うことですが、人類史上今ほど人々が文字を書き、読んでいる時代はなかったのではないでしょうか。毎日大量のメールを打ち、膨大な数の記事をネットでチェックするようになって、なお、それでも広告においてコピーという訴求は強力です。むしろ、もはや文字に飢えていない人々に、いかにしてハイスピードで興味関心を引くか、本質を理解させるか、という意味では、言葉というコミュニケーションはかつてないほど高度化しているといってもいいかもしれません。
本書は、コピーとグラフィックデザインがしっかりと一体感をもってある一つのことを訴求している事例が多数掲載されており、その意味で、とても時代的な実例集です。本サイトで紹介している書籍の中では比較的古いものですが、いまだに参照する機会が多いのは、そういった時代の流れがいまだに、いやどんどん進んでいるからでしょう。
PCやソフトの発達で、グラフィックデザインは大きな変化をしてきましたが、その中の一つに、文字をオブジェクトとして捉え、自由にレイアウト、造形することができるようになった、ということも大きいのではないでしょうか。本書に掲載されているデザインの中にも、「読ませる」だけに留まらず、デザインのモチーフの中心的な要素として文字がアレンジされている事例が数多く掲載されています。デザインとコピーが同じコンセプトに向かって相乗効果を発揮し、スピード感を持って見る者に訴えかける、という広告の可能性の中心を感じられる、なかなか古びないデザイン実例集だと思います。特に、交通広告やバラマキの営業チラシ/パンフレットなどを検討する際に、まず参照したい充実したデザイン実例集だと思います。