書籍『小さなデザインスタジオの、大きな影響力』
「少人数で成功した世界のデザインスタジオ30社」という副題にあるように、小さなデザイン会社の活動を紹介するビジュアルデータブック。章立ても1人、2人、3人というスタッフの人数で構成されており、ユニークなデザイン書籍となっています。少人数のプロダクションということもあり、掲載されているのは主にグラフィックデザインとノベルティや展示などの立体物。マス広告の事例はほとんどありません。
この本が興味深いのは、各デザイン会社に行った質問の項目です。例えば「今の会社の規模を保ちたいですか? 会社を拡大するとしたら、どのくらいまで大きくしたいですか?」「大手デザイン会社や代理店のほうが仕事はとりやすいようですが、どんな戦略でこれに対向していますか?」など、小さなデザイン会社がクオリティの高い仕事を行うために心がけていることを具体的に聞いています。とはいえ、ほとんどのデザイン会社の答えは同じ傾向。つまり「大手との競合はほとんどないし、このやり方とこの人数が最適と考えている」というものです。
メディアが多様化・細分化し、大企業によるマス広告中心のコミュニケーションだけでなく、中小の企業や事業部が小さなデザイン会社と直接やりとりしながら自社のコミュニケーションを構築していくことが注目される中で、良いクライアントと良い関係を築き、良い仕事を行うことの素晴らしさを垣間見える実例集となっています。
あえていえば、本書はどちらかというとクリエーター向けの本。特に発注元である日本の中小企業がデザインの参考にしようとしても少しニーズが違うかもしれません。しかし店舗やアパレルなどのショップのディレクターならきっと役立つはずです。小さなデザイン会社たちが好みにまかせて作った自社ツールなどが豊富に掲載されているので、ショップのブランディングにきっとインスピレーションを与えてくれるでしょう。