書籍『ネーミングをいかしたヒットデザイン』
意外なことかもしれませんが、パンフレットや会社案内などのページもののグラフィックデザインの発注を受け制作を進めるにあたって、キャッチコピーやネーミングまでさかのぼって相談を受けることは決して多くはありません。しかし、いまやコピーやネーミングは、企業のコーポレートメディアを制作する上でも、デザインの方向性、ゴール、トーンを検討するための、むしろその中心となるような重要なプロセスとなっています。デザインのリテラシーが高まり、コミュニケーションの多様性が広がる中で、一般消費者やビジネスパーソンも、すでにデザインの“目利き”となっています。そこで、そういった“目の肥えたユーザーすべて”に伝わり、行動を喚起させるデザインに、コピーやネーミングとの一体感、そして相乗効果というものが求められています。
ネーミングとデザインに一貫性や創発的な関係があること。そのことで得られるその商品・サービスのコンセプチャルな印象、ブランド哲学というものは図りしれません。反対に、ネーミングについての意識が低く、ちょっと着飾る程度の目的のデザインでは、もはや、そこに強い説得力を付加することは困難になりつつあります。
そういった意味において、本書は、デザインから考え始めた事例ではなく、むしろネーミングとデザインを対象の本質として同時に考え始めたような事例が紹介されており、その効果の高さを知ることができます。
事例集としては、ここでしか見られないような珍しい事例や射程の広い切り口はあまりありませんが、パッケージやキャンペーンの事例が多く、新サービスや新商品のパンフレットやリーフレットを制作する際に、そのコミュニケーションのコンセプトが本当に独自の価値感を持っているかどうか、デザインに“頼ろう”としていないかどうか、いま一度プロジェクトの最上流の部分から検討し直す際にパラパラとめくってみると役立つアイデアが浮かぶかもしれません。
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