書籍『捨てずにとっておきたくなる デザインのアイデア』
PIE BOOKSの「デザインのアイデア」シリーズの新刊(2014年3月)です。「季節を表現するデザインのアイデア」「イラストを使ったデザインのアイデア」など、可愛らしいデザインが業種別に載っている人気シリーズです。
今回は、ノベルティ、DM、パッケージなど、どこかにちょっとした仕掛けのあるグラフィックデザインが集められています。類書に比べると尖ったデザインや特殊加工の種類は多くないと思いますが、その分リアリティのある事例が多く、洗練された高感度のデザインという傾向ではなく、実際に企業や店舗のアピールのために考えられた、特徴を訴求するちょっとしたアイデアが実現されているのを確認することができます。
平面グラフィックではなく、立体的なツールをデザインする時って、以外と最終的な「形」の参考になるものがないと、アイデアや企画だけではその存在感や印象が創造しづらいことがあります。箱ひとつとっても、赤いテカリのある大きめの箱などが実際に制作された状態が掲載されているのを見るのと、デザインの方向性について確信が持てるかどうかに違いがあります。
紙の平面グラフィックと違い、やはり立体物だと、加工の細かい部分が重要になります。たとえばくるみ箱のエッジの部分や、紙製のオーナメントを組み立てた時にできる小さな隙間の意外な味わいなど、立体ならではの全体から受ける印象が最終成果物のトーンや良さをイメージするのにこの本は役立ちます。
立体物は型から起こしたりして、そのツールのためにオーダーメイドすることも多いので、「この貼り合わせの部分は少しずれるけど、それでいいんだ」という判断もデザインするうえでの大切なスキルになります。もちろん、ズレやアキが許されないツールもありますが、適度なクラフト感といったものは、紙質や印刷状態だけでなく立体物につきものの素材感やシワにこそ宿ることも確かですからね。こういったデザイン事例集を見ることで、目指すべき適度な完成度を知るのも大事なことでしょう。
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